ふく拵え(こしらえ) たてやは、石川県で和服の仕立、手縫足袋の制作販売、裁縫稽古を営む個人の仕立屋です。

たてやとわざわざ屋号を付けていますが、和裁家業を継いだ身ではありません。

言葉にしがたい着物の美しさにひかれて和裁を学び、そこで多くの人が日本の風土の中で創意工夫してきた歴史に出会いました。

着るという所作をいかに健やかにするか、服を作るたくさんの工程をいかに無理なく楽しみ、美しいものを作るか、と考えて実践し続けて磨かれた深い知恵に感銘を受け、その着るものに対するまっとうな姿勢をほんの微力な生業ででも継いでゆこう、と思ったのが起業のきっかけでした。

以後色々なの方のお力添えやご依頼を糧に、営業を続けています。

服作りの約束事

私が守り継ぎたいと思っていることー幾世代を経ても守られてきた、服作りの約束事ーは主に3つあります。

布を真っ直ぐに裁ち、真っ直ぐに縫うこと、そして手で縫うことです。

平らな布を真っ直ぐに扱うと平面構成の服になりますが、着た時に体との間に空間ができて湿気を溜めず、湿度の高い地域や季節でも肌の清潔を保てます。

冬は布の種類や開口部などに配慮すると蒸れずに暖かい、快適な服装ができます。

たたむと薄くまとまり、収納や持ち運びにかさばらない形であり、また裁つ・縫うを曲線で扱うよりも作業が簡単で修繕や再現もしやすく、習えば誰でも出来るシンプルさもあります。

長着(きもの)や羽織、袴、帯など、さまざまなかたちに展開される前の基本技術の中に、日本の風土に適った特性、誰でもが着るのだから誰の手でも、それなりに作れるような簡潔な仕立て方の知恵が揃っています。

また手で縫うという素朴な技術も、和服の伴侶と言いたいくらい大切な要素です。

手で縫うと柔軟性のある縫い目になり、動きや重さの力を受け止め、布を傷めにくい仕立になります。

きものは余分な布もあまり切り取らずに縫い込んで仕上げますが、これは後で寸法や形を変えたり、修繕する時の可能性を多く残すためです。

解くにも解きやすく、針目が小さいので縫い替えが容易で、布を色々な形で大切に使い続けられたり、季節の変化などに即応できる手縫い技術は、和服を作る上で外したくないことです。

そして、このような長い目で見たときの利点だけでなく、即、着る人が感じられる魅力とは何でしょうか。

両手で揉むようにして形作られる手縫い服は、軽いと感じるほど縫い目が柔らかく、しなやかで身体によく馴染むといった快適さを持っています。

この着心地のよさが、着る人にとっての最大の魅力です。

また、大変地味なところではありますが、裏表に出る針目は、使っていくうちに、洗い込むごとに陰影としてあらわれ、手仕事をはっきりと証ししていてとても味わい深い服の姿を作りだします。

ふと目に入った時に和むような気持ちになることもあり、着る営みを豊かにしてくれていると思います。

「着る」という営みを豊かに

10年近く、自分で作った服を毎日着て暮らしていて、失敗やとまどいも含めたさまざまな経験で和服の暮らし方を探究し、その知恵に助けられてきました。

「着る」営み、「服を作る」営みから、生きる姿勢を学んでいます。

そして、完璧ではないけれど、歳を追うごとに暮らしやすくなりました。

もしあなたが、今着ているものに納得がいっていない、あるいは、よりよくしたいとお思いでしたら、たてやは何らかお役に立てるかもしれません。

TPOをわきまえながら、自然体でいられる服が着たい

売場に溢れるたくさんの洋服を目の前に、「着たいもの、ない」と途方に暮れたことがある(暮れている)

和装には魅力を感じる

はめ込むのではなく体を包む服が着たい 

「手で縫った服を着て暮らす」

ー快適で、味わい深いー暮らし方を提供してまいります。

屋号は…

屋号「たてや」は…ことば遊びです。

針を動かすとき、普通だと「縫う」の響きのように「線を引く」感覚なのかもしれませんが、私は針先でタッタッと「点を打つ」感覚で作業しています。

タッタッと点を打つ…しば犬が嬉しそうに、足取り軽く散歩しているような、軽快なリズムをイメージしてこの屋号にしました。